私のママ友で学生時代、日本育英会の奨学金を利用していた人がいます。
彼女とご主人は公務員で、便利な場所にマイホームも購入して、かわいい子どもにも恵まれて何不自由ないように見えました。
ところが、彼女は本当は専業主婦になりたかったのです。
それなのに、奨学金の返済があるために幼い子どもたちを保育園に預けて働いていたのでした。
私は奨学金の利用をしていなかったので、その大変さはわからないのですが、彼女の口から「奨学金の返済」という言葉を何回も聞いたので、安定した職業についていても大変なのだなと思ったことが印象に残っています。
それでも、私たち親世代が社会に出たころは職に就きさえすれば奨学金の返済が困難になることはあまりありませんでした。
けれども、長引く日本経済の低迷が奨学金制度を変えていき、以前では考えられなかった問題を引き起こしています。
今回は奨学金制度の利用について考えてみます。
奨学金利用者と返済が困難になる人の増加
ところで、大学生の奨学金の利用率がどのくらいかご存知ですか?
日本学生支援機構の調査によると、機構の奨学金に限らず、何らかの奨学金を利用している大学生(4年制昼間部)の割合は平成24年度に52.5%と過去最高になりました。
その後は下降しているものの約半数の学生が何らかの奨学金を利用していることに変わりはありません。
学生の奨学金利用が増える一方で、奨学金を借りた既卒者の8人に1人が滞納や返済猶予になっています。
奨学金の返済を3ヶ月滞納するとブラックリストに載ります。
子どもの人生に重大な影響を与える奨学金。
ぼんやりと「教育費の足りない部分は奨学金で」と考えていたら、要注意です。
親世代の奨学金とは違う今の奨学金制度
奨学金は、原則的に返済の必要がある「借金」です。
と言うと、「そんなことはわかっている」と言われそうですね。
けれども、滞納者にはサラ金顔負けの厳しい取り立てがあることまでご存知でしたか?
そもそも、奨学金返済がまるでサラ金地獄のように言われるようになったのは、小泉改革で日本育英会が学生支援機構に改組されたことに始まります。
学生支援機構が奨学金事業を引き継いだのだから、内容はそれほど変わらないのではと思う人もいるでしょうが、さにあらず。
日本育英会は教育支援団体であるのに対し、学生支援機構は貸金業なのが実態です。
もちろん金利は民間の教育ローンより低いのでメリットはあります。
けれども、取り立て実務を民間の債権回収会社に委託しています。
ですから、滞納者への対応はその道のプロが当たりますので、無慈悲この上ないのです。
仮に奨学金を借りると、社会人のスタート時に平均して300万円もの負債を抱えていることになります。
すべての奨学金利用者が返済が無理なくできる安定した収入を得られるとは限りませんし、病気などで返済が苦しくなる場合も想定しなくてはなりません。
「学資が足りないなら奨学金」というイージーな考えは捨てるべきです。
奨学金の利用はどうしても必要な時だけ
それでも、子どもは学びたいのに親の事情でどうしても経済的に難しいこともあるでしょう。
私の友人にも突然の重い病気で治療に大金がかかり、子どもの教育費のために貯めていたお金を使わざるを得なかった人がいます。
そんな時、奨学金は金利の面でも、使い勝手でも一番有利な方法であることには変わりありません。
ただ、本当に経済的に困難な状況ですと、返済のいらない給付型の奨学金が利用できる可能性も出てきますので、そちらの情報収集もしてみてください。
子どもが生まれたらこちらの方法を参考にして教育費を準備してくださいね!
ファイナンシャルプランナー
松田 聡子