国民年金を払っていないあなた、大損してますよ!

国民年金は日本国民なら20歳になったら加入しなくてはならないはずなのに、納付率が6割に満たないという調査結果が出ています。

年金財政はいずれ破たんするから年金保険料は払わないという若者が増えているからです。

確かに今の若者が高齢者の年金を負担しているにもかかわらず、自分たちはそれより少なくしかもらえないという世代間格差はいかんともしがたい問題です。

でも、保険料を払わないことは国民年金を受け取らないということです。
つまり、貯蓄などで老後資金を全額自力で準備することになります。

その選択は本当に合理的なのでしょうか?

国民年金の損得を検証してみる

国民年金の加入は国民の義務なので、損得で判断する本来は問題ではありません。
そこをあえて、損なのか得なのかをざっくり考えてみます。

国民年金の毎月の保険料は、1万6900円です。
満額の場合の払込期間は40年だとすると、払込総額は約800万円くらいになります。

それに対して受け取れる金額は(何歳まで生きるかで変わりますが)80歳まで生きたとして総額約1200万円です。

800万円の支払総額で、1200万円受け取ることができる。
老齢年金は生きている限り一生涯受け取れますので、長生きすればするほど受取総額が増えるということになります。

個人年金など民間の金融商品でこれほど効率よく準備するのは至難の業です。

なぜ、こんなことができるのか。
それは、国民年金の給付の財源は保険料からだけでないからです。
給付の半分は税金で賄われているのです。

国民年金の原資となる税金とは、全国民が負担している消費税です。
つまり、国民年金保険料を払わない人は自分が負担した消費税をドブに捨てているのと同じことをしているのです。

メリットは利回りだけではない!

国民年金は利回りで他の金融商品に圧勝ですが、メリットはそれだけではありません。

年金制度というと、まずは老後資金をイメージします。
ところが、公的年金制度の役割はそれだけではありません。
まず、亡くなった時に遺族の生活保障の役割を持つ「遺族年金」、そして重度の障害になったときの所得保障である「障害年金」があります。

これらを個別に自力で準備するにはまたまたお金がかかります。
どう考えても公的年金を優先するのが合理的です。

そして国民年金保険料は所得税の計算上、「全額所得控除」の対象となります。
つまり、保険料を払うと節税になります。

民間の生命保険はいくら保険料を払っても現在は最高4万円までしか所得控除の対象になりませんので、節税という観点から言っても、国民年金が有利です。

もうひとつ、忘れてはならないのは国民年金の保険料を払っていない人はIdecoなど確定拠出年金に拠出できません。
節税しながら老後資金を準備する機会を失うことになります。

将来に渡って安心か

というわけで、意外にもメリット大の国民年金でしたが、気になることもありますね。
自分達が高齢者になる頃には払い損になるのでは?という疑問です。

例えば、今後支給開始年齢が65歳から70歳とかに引き上げられて、結局もらえないまま死んでしまうのでは?などという心配もありますね。

こちらの損益分岐点の試算などは省きますが、結論から言うとそのような不利益変更があったとしても国民年金の保険料は払ったほうがいいと考えます。

その理由のひとつは厚生年金は「60代前半の給付の段階的廃止」など大きな給付削減があるのに対し、国民年金は大きな変更がないことです。

むしろ、消費税増税して国民年金の給付財源確保など制度を維持する姿勢が明確になっています。

もうひとつの理由は、たとえ損得のバランスが崩れても「生きている限りずっと受け取れる年金」であること「障害年金・遺族年金という保険的機能」をすべて自力で準備するのは合理的でないからです。

もちろん、今後不利益な変更がある可能性は否定できません。
しかも、現時点で国民年金だけで老後の生活費をすべて賄うことはできないでしょう。
ですから、老後の生活の基礎部分はまず「公的年金」で賄い、足りない部分を確定拠出年などの自助努力で上乗せする、これがセオリーだと思います。


ファイナンシャルプランナー
松田 聡子